密葬 そして 家族葬
葬儀業界に携わって15年。
私がこの業界に足を踏み入れた頃には「直葬」や「家族葬」という送り方はほとんど認知されていなかったように思います。何か事情があって周りに知られたくない。誰にも知らせずひっそりと葬儀を済ませたい。 そんな送り方に対し「密葬」という言葉を使うことが稀にありました。
ただ、本来の意味では「密葬」とは、近親者のみで葬儀を執り行い 後日「本葬」を執り行う場合のことを言います。今と違い、「家族葬」や「直葬」という言葉がなかった頃は、本葬を執り行うかどうかにかかわらず、周りに知らせず葬儀を執り行う場合は「密葬」という言い方をしていたように思われます。
当時から感じていたのですが、「密葬」という言葉の響きにはどうも暗いイメージがつきまとうように思います。秘密の密 という漢字からでしょうか。昔はお葬式といえば、親族、ご近所、会社関係等々当然のように弔問に訪れるものでした。それが当たり前の時代に「誰にも知らせない」という送り方を選択するのには、それなりの勇気と覚悟がいることだと思います。
実際は当時の「密葬」と、今の「家族葬」 送り方の違いはほとんどありません。家族を中心とした親しい人のみで送る といった観点ではほぼ同じといっていいでしょう。言葉の違いだけですが、「密葬」だと 隠したい。知られたくない。「家族葬」だと 家族だけでゆっくりお別れがしたい。そんな言葉の持つイメージの違いから「家族葬」という言葉が急速に広まったのではないかと思います。
派手なことは行わず、親しい人が集まって暖かく送れたらそれでいいのに・・・
本心でそう願っていてもそれがかなわない時代でもありました。
今は、送り方も多様化し それぞれが望む送り方が選択できるようになってきました。当たり前の葬儀式典しか執り行えなかった時代から、家族それぞれの「送り方」があっていいんだよ そんなメッセージの込められた新しい言葉 それが「家族葬」なんだと思います。
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